プレー・アカデミーの助成団体、流通経済大学が女子ラグビーの活動を通してジェンダーの理解を高める

Girls in discussing with each other in a circle
(左から三人目)漣さんが中高生のグループでジェンダー問題についてのディスカッションを先導する ©Hiroki Nishioka/Play Academy

流通経済大学付属柏高校の女子ラグビー部に所属する漣さんは、自分のジェンダーバイアスについて考える機会に出会う事がなかったと話す。ところが、同大学の女子ラグビーの女性エンパワーメントプログラムHERS(ハーズ)に携わるようになり、価値観やジェンダーについての考え、ラグビーへの取り組み方がガラッと変わる。

HAPPINESS(幸せの実現)・EDUCATION(教育の機会)・RIGHTS(権利を知る)・SAFE(安全な環境)の頭文字を示すHERSは、遊びやスポーツを通じて女の子に人生に変革をもたらすことを理念に掲げ設立したプレー・アカデミーwith大坂なおみの助成金を受け、2021年より発足。HERSは一般的に男性がプレーする“危ないスポーツ”とされるラグビーを使って、より自分らしく輝ける女性を増やすことを掲げている。

「流経ではトップレベルの選手と一緒に練習に取り組んだり、プレイヤーとしてだけではなく、一人の人間として成長出来る」と語る漣さん。だが、「テレビの露出などを考えると、まだまだ女子と男子の格差を感じずには居られない」とジェンダーギャップを痛感。

Rugby girls high five
Kashiwa High School is one of the few schools with a girls’ rugby team © Hiroki Nishioka/Play Academy

元々は男子チームしか存在しなかった流通経済大学のラグビー部。そんな中、2011年にラグビー経験者である井上愛美氏が女子チームを発足し、2019年には流通経済大学付属柏高校にも設立。そして今も、日本では数少ない男女両方のチームをもつ学校である。HERSはラグビーの楽しさを広めるだけではなく、ラグビーを使って教育する事も重要視するプログラムである。

プレー・アカデミーの助成金を受けて二年目のHERS。今年は、前年の経験を踏まえて以下の3つアプローチに重点を置き、ジェンダーの理解とラグビーを普及している:1)ジェンダーの理解を高める、2)安心安全に楽しくラグビーをする、3)リーダー・ロールモデルとして自信を持つこと。

Pair of students running together
大学生と高校生がペアを組み、ジェンダー問題について考えるアクティビティ ©Hiroki Nishioka/Play Academy

2022年7月に世界経済フォーラムより発表されたジェンダーギャップ指数146か国中の116位 と、G7の中では最低位を維持している日本。そんなジェンダーの理解がまだまだ乏しい日本だからこそ、非常に重要視されるジェンダー教育。今年のジェンダー教育の部分でHERS は、ラグビー界の多様な職種で活躍する女性ゲストを迎え、ジェンダーについて考え、考え直し、学ぶ機会を提供。

高大連携授業の一環として付属柏高校で2時間の授業を2日間設けてラグビーやゲームを通じてジェンダー問題について知り、どのような工夫があれば解決に近づくかを考えたり、スポーツ心理学者であり、元男子ラグビー日本代表のメンタルコーチを務めた荒木香織氏をゲストスピーカーとして招待し様々な角度からジェンダーを見て、考え、理解を深めた。

HERSのおかげで少しづつジェンダーの課題などを知り、理解し始めていると話す漣さん。学校でSDGs等のテーマが出ると、積極的にジェンダーを選択し、更に理解を深めながら向き合っているという。

Photo of a girl
付属高校柏校女子ラグビー部キャンプテンの夢生さん ©Hiroki Nishioka/Play Academy

「今後はHERSの活動をもっと広め、多くの人にラグビーは女の子のスポーツでもあることを知って欲しい。そしてこの先、女の子がジェンダーにとらわれず好きな物事を選択できる世の中になってほしい」と、自らHERSが掲げる「ラグビーを通じて、より自分らしく輝ける女性」となり、それを広めるべく日々活動に励んでいる。

更にはこれらの企画に参加した付属柏高校女子ラグビー部のキャプテンでもある夢生(17)さんは、自身の「バイアスやステレオタイプ」に気づかされたと話す。「女の子はこうで、男の子はこうでなくてはいけない」と言うジェンダーの概念を疑問視するようになり「色々な知識と経験を経て人にはそれぞれ長所と短所があり、それはジェンダーや性別から来るものではなく、一人の人間としてあるもの。それを踏まえてどう接していくのがベストかを考えるようになった」と、HERSを通して得た経験や知識をラグビー選手、キャプテンだけではなく、一人の人間として活かしている。

文: Play Academy