プレー・アカデミーが大阪へ支援を広め、桃山学院教育大学と共に部活動改革に取り組む

Girl playing volleyball
桃山学院教育大学は積極的に部活動問題に取り組み、地域スポーツと連携をとっている。©Akiko Ota-Griffith/For Play Academy with Naomi Osaka

勝つことを重要視し、体罰や厳しすぎる指導方針を始め、スポーツ離れや部活動を担当する教師のオーバーワーク等が挙げられる部活動問題。それらの問題に積極的に取り組むべく、2020年に桃山学院教育大学は総合型地域スポーツクラブ「桃教スポーツアカデミー」を立ち上げ、昨年には安全かつ効果的な部活動の指導を行うための指導者を育成することを目的とした「部活動指導者養成プログラム」を設立。そして桃山学院教育大学の地域スポーツへの取り組みを後押しする形で、2023年より桃山学院教育大学がプレー・アカデミー with 大坂なおみの助成を受け、同大学を舞台に「ガールズパワープログラム:部活動を通じた女子生徒のリーダーシップ開発プログラム(以下、ガールズパワープログラム)」をキックオフさせた。

ガールズパワープログラムは、部活動の生徒自らが目標を設定し、目標に向かって適切な行動がとれる能力を育むと同時に、このように生徒らがエンパワーされるよう桃山学院教育大学の学生コーチの伴走能力を育むことを目的としている。一年目は指導者4名でスタートし、3月から事前研修を受け、5月以降に大学が連携する地域の中学校にそれぞれが派遣された。必要な知識や情報を学ぶための事前研修では主に4つのテーマ:女性のスポーツ医学、セーフガーディング、スポーツによる女性エンパワーメント、クラブビルディングを取り上げ、様々な角度から専門的かつ実践的なスキルを身につけた。

女性のスポーツ医学では、中学生の女の子にとっては特に多感な時期であり、心理的身体的な変化を理解し実践へのヒントとなるよう、女性の三主徴を中心に月経周期と運動パフォーマンス、適切な栄養摂取の重要性、怪我の予防、メンタルヘルスとウェルビーイングが話し合われた。

プレー・アカデミーでも特に重要視しているセーフガーディングに関しては、「すべての人が安心・安全にスポーツに参加する権利を守るために組織としての取り組み」であることを認識した上で事例などを交えて議論。受講した学生は様々な力の差を認識した上で「その力を使って団体、会社、チームを良くしていくことそのマインドが大切である」と谷中太円さんは話し、今後部活動を良くしていく中でどう活かされるのかを見守りたい。

また、スポーツによる女性エンパワーメントで同氏は「日本は女性の社会進出や立場が世界の国々と比べると低いという現実がありました。それに対してどのようにアプローチをしていけるか」に加え、「男性指導者でも女性のことを考えて行動していくようにしたい」という発想もあった。

Coach teaching student how to bump a volleyball
桃山学院教育大学の学生コーチが架け橋となり、部活動に所属する中学生ら自身をエンパワー ©Akiko Ota-Griffith

クラブビルディングでは、部活動で生じる様々な課題を生徒の自治によって解決していくのか、課題解決に向けて、自分たち(指導者)がどのようにサポートすればよいのかを議論した。世古汐音さんは「クラブは生徒、選手が中心となって存在するものであるという事」、辻脇とあ子さんは「私たち部活動指導者は顧問と生徒の架け橋とならなければならない」事をそれぞれ再確認し、今後架け橋となる学生コーチたちが部活動に所属する中学生ら自身をエンパワーしていく重要性も理解した様子。

これらの研修を終え、学生コーチら4名は女子バレー部、女子バスケットボール部、男子サッカー部に週1の訪問を開始し、早速信頼関係を構築し始めている。学生らは週1の練習前後に各部の顧問の先生と打ち合わせを実施し、チームの現状や練習方針について情報を共有し、念入りにコミュニケーションを取っている。本プログラムを総括しているプロジェクトマネージャーで大学講師の村井愛美氏は、「女子生徒が部活動で様々な意思決定をする環境を設定し、トライアンドエラーを繰り返しながら自主的・自発的部な活動を自分たちで運営して、エンパワーしていく」とし、環境設定・進行・安全な伴走が出来る指導者の育成が大事だと話す。また、「生徒も指導者もトライアンドエラーをしながら自分たちの部活を良くしていくクラブビルディング中核にしたフレーム」であると説明した。また、現場では「生徒のやりたいことと指導者側がやりたいことにズレが生じる場合があるので、観察によって読み取る場合も多いよう」と村井氏は話し、常に臨機応変に対応するスキルも育まれている。

初年度はプログラムに参加した学生や生徒の数が少なかったものの、逆に手厚く見守ることが出来、各部活動のニーズや状況を詳しく知るいい機会となった。また、「学生の活動頻度等で課題も出ていますので、来年度は、タブレット端末を用いての遠隔指導や情報共有の方法(部活動DX)を模索したい」と村井氏は1年目を振り返った。更には 男子部活動へ女子指導者を派遣していることで「女子だけを見て気づけないことでも、比較対象の男子があることで気付けることもあると思います」と、この違いがこれからどのように反映されるのかも注目していきたい。部活動改革という大きな課題を前に、少しでも状況を改善すべく取り組んでいる本プログラム。各派遣先で得た情報や知識、それぞれが経験した数えきれないほどトライアンドエラーを踏まえて改善された来年度のプログラムに大いに期待したい。

文: Play Academy