都内バスケットボールコートに、競技用車いすから力いっぱいボールを投げる小さな姿がある。
「投げるのがいちばん楽しい。点数が入ったら、うれしい」
「車いすバスケットボールの真の楽しさを伝え、人間の可能性を追求する」をビジョンに掲げるJキャンプは、2024年からプレー・アカデミー with 大坂なおみの助成を受け、「Push for Future」プログラムを開始した。障害のある女の子や若年層の女性を中心に、彼女たちが車いすスポーツを通じて、自分の未来(Future)に向け、自信を持って一歩を踏み出す(Push)ことを後押しするプロジェクトだ。その一環として、小学3年生から中学生の女の子を対象に「車いすバスケでPlay Date」を開催している。
美月さんが参加するようになって約1年。車いすに乗って走るスピードは増し、シュートも次々と決まるようになった。満面の笑みで仲間とハイタッチを交わす姿が印象的だ。
明るく活発な美月さんだが、家では自ら教科書を開いて勉強したり、動画を見たりして過ごすことが多い。陸上やテニスの体験会に参加するなど運動には前向きだが、普段から車いすで生活をする美月さんにとって、自由に身体を動かす機会は決して多くはない。
保護者は、このプログラムについて「本人の居場所を増やし、社交性を育むという点で大きな意味がある」と語る。
「もともと大勢の人と関わるのは得意ではなく、“私は(外から)見てます”というタイプだった。でも今はシュートするってボールをもらったり、自分から手を挙げたりと、意欲的になった。毎回お友達が変わっても、本人らしくやれるようになった」
その変化を感じているのは、Push for Futureスタッフの夢さんも同じだ。
「最初は(ゴールの下に吊るしてある)タンバリンにシュートしていたけど、だんだん上のゴールにも挑戦するようになった。そのチャレンジ精神がいいなと思う」

「学校では走るだけ」と話す美月さんだが、ここは「投げる」「チャレンジする」「新しい友達と分かち合う」といった新しい経験で彩られている。
Jキャンプのプロジェクトマネージャー原田麻紀子氏は、美月さんが楽しみながら成長していく姿をこう語る。
「何事も楽しんで、遠慮せずに自分のやりたいことに挑戦してくれている。回を重ねるごとに、お友達との会話が増えたり、プレー中にアイデアを出し合ったりという場面が増えてきている」
「一番好きなのはバスケ!もっと投げるのを頑張りたい」と目を輝かせる姿からは、挑戦を楽しみ、未来に向けて自らを“Push”していく力強さが伝わってくる。